春の午後

父の葬儀がありました
静かな春の午後でした
人の姿が消え去った
静かな春の午後でした

遠くを走る鉄橋の
それから小鳥の声でした
風の音さえ聞こえない
明るい春の午後でした

平和な春のころでした
それから雨になりました
それでも父を見送れて
僕の心は晴れました

誰にも優しい人でした
いつも守ってくれました
心配ばかりをかけました
ゆっくり休んでくださいね

今ごろ母と再会し
遅かったねと叱られて
苦笑いする父の顔
そんな姿が目に浮かぶ

優しい春の昼下がり
平和な午後のひと時は
あの頃過ごした春の色
家族が生きた春の色








花寒

これからこと
どうしたらいいか
わからない
ただじっとして
その時を待つだけだ
こんなにも寒い
春の雲

これまでのこと
考えることも
できなくて
ただ淡々と
過ごしてきただけだ
あんなにも優しい
春の夕暮れ

それでもきっと
笑顔で過ごせる日が来る
きっと来る




GTロマンス~Z34型フェアレディZ VerST・6MT(二代目)~

変成岩.pptx
 ~Z34型フェアレディZ
     VerST・6MT(二代目)~

以前にも書きましたが、リーフのストレスがたまりにたまった五年前の十二月、ワシはとうとう我慢ができなくなってのたれ死に覚悟で二回目のZ34の購入を決めました。あれから5年の月日が流れ、ミッドナイトブルーの340馬力のZは、いろいろな思い出を作ってくれました。
 大きな声では言えませんが、以前中途半端に別れてしまった彼女を助手席に乗せることもできましたし、厳つい顔のミニバンにあおり運転されることも皆無でしたし、いろんなところで、いわゆるスポーツカー乗りの方々と交流したり一緒に走ったり、とても楽しい時間を過ごすことができたと思います。
 そして2020年1月。
 5年目を迎えたZが車検を迎えることになりました。と同時に例の残価設定ローンの契約も切れることになっていました。
 しかもワシ自身も3月で定年退職となり、年金暮らしの身となります。いえ、実際にはいつのまにかすっかりうやむやになってしまった過去の社保庁の年金使い込みにより、あと五年も再任用で働かなければなりません。 再任用と言えば聞こえはいいのですが、実際には労働内容は今まで通りで年収半分以下の過酷な世界です。人の年金を台無しにした社保庁のおっさんたちは、責任もとらないでたっぷり退職金や年金をもらって、今頃ハワイでメロンでも食っているのだと思うと、腹が立って腹が立って。他の国でしたら革命の一つも起きているはずですが、すっかり牙を抜かれたワシたちのはそんが元気もやる気もありません。これから先の生活を考えると不安しかありません。
 というわけで、ワシはZを買うときに、あえて残価設定ローンを選び、定年と同時にZに関するすべてを精算してさよならすることに決めていました。あとはアルト一緒にい細く長い老後を送っていこうと決めていました。
 もう十分でしょう。マニュアルミッションの340馬力の二人乗りの自動車は。還暦ですよ。還暦。本来なら孫たちもいて、縁側でひなたぼっこをしながらネコをさすっている歳であります。
 ワシは冬休みのよく晴れた日に、ガレージに行って久しぶりにZのカバーを外してみました。
 それからいろいろと思いを巡らしながら、Zに触れていました。
 ほとんどガレージにカバーをかけて置いていたために、また、まだ5千㎞しか走っていないために、ミッドナイトブルーのボディは冬の日射しを受けてツヤツヤと輝いています。太いホイールもその中に見える赤いブレーキキャリパーもタイヤも新品同様です。
 あとひと月。来月の今頃はワシの手の届かないところで、もしかしたら新しいオーナーの元にいるかも知れない。大事にして貰えるといいなあなどと、Zをすっかり擬人化して別れを惜しんでおりました。
 それからエンジンをかけて、久しぶりに走らせてみることにしました。
 たぶん2ヶ月以上動いていません。バッテリーは大丈夫だろうか。そう考えながら、クラッチを踏み込んでエンジンのスタートボタンを押すと・・
「きゅるきゅるきゅる」
と頼りないクランキングの後、バオンとあっけなくエンジンが始動しました。それからかなり高い回転数でアイドリングを始めました。「やった。バッテリーは生きてるぞ。」
ワシはさすが国産車じゃなあと関心しました。センターコンソール上の電圧計は14ボルトを示しており、限界まで弱っていたバッテリーに向かってオイルネーターから電気が流れ込んでいるのがわかります。
ワシは、Zに乗り込んでゆっくりとガレージから出し、そのまま海岸通りに向かいました。ゆっくり走らせながら、シートやミラーを微調整し、各部のチェックをしました。
 とても気になったのが乗り心地です。冬場で気温が低くて空気圧が下がっているはずなのにごつごつします。路面の悪いところでは、極端に操縦性が悪化します。元々乗り心地の良い車ではありませんが、これはなんぼなんでもひどすぎます。長時間の駐車と超扁平タイヤと車重と気温と、その他諸々の関係で、ワシが最も避けたかったタイヤ変形(フラットスポット)が起きたんでしょうか。ワシはZを止めてタイヤを点検しました。目立った異常もないしパンクも変形もしていないし、タイヤの山は山ほどあるし。しかし、トレッド面をさわってみると、なぜかカチカチに硬くなっています。ワシは空気圧計を出して空気圧を測って見ました。標準2,2のところ2,4も入っています。これはワシがあえて長時間駐車対策のために多めに空気を入れているからです。ワシは標準の2,2に再調整し再び走ってみました。
 さっきよりはマシになったのですが、まだゴツゴツ感というか異常な硬さが残っています。これはタイやのゴムそのものです。
 このまま乗り続けるには、タイヤ交換とバッテリー交換は不可欠だなあ。車検と併せてなんぼくらいかかるのかなあなどと、もうすぐ手放すZのことを考えていました。
 しかしいい。コンパクトで思い通りに動くし、3,7Lのエンジンはどこから踏んでも加速するし、そのままオーバー7000回転まで一気にまさに吠えるというにグオンと吹き上がるし。近頃の省燃費カーやハイブリッドカーでは絶対に味わえん凄さっていうか楽しさというか。
 人間って不思議なもので、男女でも似たようなことがありますが、もうお別れかと思うと相手の良いところばかりが目について。後先考えずに取っってしまったその後の行動でこれまでどれだけ失敗してきたことか。
 ワシは数多くの失敗を経て、しっかり学習しましたし、もう定年だし、こんな大馬力のスポーツカーを運転する気力も体力もないし、自分のことはわきまえているので絶対にアホなことは考えません。
「アホなことって?」

 それは考えるのも恐ろしくて言えませんが言っちゃうと・・・
「ワシはこのリース切れのZを退職金で一括 払いしてワシのものにしたいのう。そうしたらどれぐらいかかるんじゃろう」 
ということであります。
 親しい日産のセールスさんに概算をお願いしました。
残価約154万円、車検代約15万円(含バッテリー交換)、タイヤ交換約20万円(純正ブリヂストンポテンザRE050A 含組み替え料金)約190万円かあ。
ワシはこの時点で、190万だったら老後を考えなければ何とかなるなあと思ってしまいました。どうせ子どももおらんし、住宅ローンはあるけどお金を持ってあの世に行けんし。退職金を(妻から)横領したら払えるぞと。
 こういうときに後先考えずに前向きになれるのはワシの良いところです。
 ワシはガレージに行ってもう一度zを見てから、すぐにセールスさんに電話して買い取って車検出すことを伝えました。ワシを熟知しているセールスさんもその方が絶対にいいと背中を押してくれました。ワシは早速、少しでも安く上げるためにタイヤとバッテリーを自分で何とか手配することにしました。
 タイヤは山もあったしひび割れもなかったので交換しないという選択もあったのですが、六年目を迎えゴムがカチカチになって乗り心地が最悪になっていることを知ってしまったので迷わず交換することにしました。タイヤさえあれば、車検時に組み替えバランスエアバルブ廃棄料等すべてこみこみ8000円でやってくれるそうです。
 ワシはタイヤについてこの忙しいときにものすごく検討を重ねて、ミシュランに決めることにしました。ポテンザも捨てがたいところもありましたが、グリップと乗り心地、ワシの乗り方等のバランスを考慮するとミシュランがベストという結論になりました。しかも安い。製造年月日にこだわってアマゾンや楽天を駆使して探し、思ったより安く手に入ったので直接日産に送ってもらうことにしました。バッテリーは、少々高かったのですが日産で交換してもらうことにしました。
 そいでもって2020年の1月18日の珍しく快晴の土曜日に萩の日産にZを持って行きました。
「なんかZが嬉しそうじゃのう。」
と思いました。実はワシが一番嬉しかったのですが、今後のことを考えると一抹の不安もあったこと否定しません。しかしZのシートに身を預けて、よく晴れた午後の流れる海岸通りの景色を見ていたら、そんなことすっかり忘れて、まだまだZに乗れる喜びで脳天気に浮かれておりました。
 一週間後の一月25日これまたこの時期の山陰にしては超珍しくよく晴れた土曜日、Zを引き取りにいきました。
 日産の駐車場にうずくまっている
を見て、素直にかっこいいと思いました。なんか独特のオーラがあるんよね。この車。やっぱり売らなくて良かったとしみじみ思いました。それから整備の人から説明を受けてセールスさんにお礼を言って、お金がないので日産カードで車検代金を分割で払って帰途につきました。
 帰りに感じたことですが、なんかというか劇的に乗り心地が良くなったというか静かになったというか。ワシのような素人でもわかる。すごいぞミシュラン。
「そういえば昔(ワシの若い頃)は、車に飽 きて買い換えを考えたら、その前にミシュ ランに変えてみいと言われとったなあ。」

 なんじゃかんじゃありましたが、というわけでZはまだワシのガレージにあります。お金はかかりますが、何かエネルギーを与えてくれます。売らなくて良かったと心から思っています。
 仕方がないのでワシは4月から再任用で働きます。いやなことも多々あると思いますが休日にZを出してドライブするだけで、Zとどこかに行くだけで、あるいは洗車したり眺めたりするだけで、ワシはいやなことや不安などはすっかり忘れてすっきり元気に過ごせるような気がしています。
 ワシと同じおっさんたちよ。ワシは日頃は中古のマニュアルの7年落ちのアルトに載っていますが、この車も大好きで洗ったり掃除機かけたり整備したりして通勤にも使っています。それでもときどきあおり運転的な不愉快なことに遭遇することもあります。しかしワシにはZがある。単純なワシはそれだけで元気に自信を持って今後も生きていけるような気がしています。
 さあ。午後からZ出して高速乗って夜景でも見に行ってこようか。そんな自分であり続けるにはZは最高のパートナーです。