「カウントダウン」1(8月15日のこと)

それは突然始まった
どうしてなのかかわからない
そうなるはずだはなかったし
そうするつもりもなかったし
それが運命というものだ
どうにもならずに流される

今日は映画に行くはずが
楽しく出発したはずが
ひょんなことから口げんか
治まりつかずに引き返す

車内無言で気まずくて
今さら後に引けなくて
思わず行った捨て台詞
言ってはいけないこの言葉

「今月の末にアパートを引き払うことになっている」
「・・・」
「すまないけど君の荷物の撤収と鍵を返してくれ」
「・・・」
君は黙って頷いて
しばらくしてから
「・・・はい」という
君の顔など見られない
どんな気持ちでいることか

君の家まで20分
ずっと無言でいる二人
言ってしまった今日ここで
いつかは言おうとしてたこと

いつもの場所に車止め
乗せたばかりの君降ろす
「ごめんなさい」の一言と
作り笑顔で降りる君

どうしてこんなことになる
さっきまで楽しく過ごしてた
映画の話をしてたのに
一人になって考える

ぽっかり空いた午後の時
仕方がないのでアパートに
荷物を片付け出る準備
見慣れた車が止まってる

二人気まずく鉢合わせ
黙って荷物を片付ける
一つ一つに思い出が
こんなはずではなかったね

こたつをばらして箱に入れ
君と一緒に考える
去年の冬に買ってきて
二人はしゃいだあの頃を

コップに茶碗にマグカップ
どれもが二つずつあって
一緒に買ってそろえたら
夫婦みたいと笑ってた

あっという間の1時間
夢中でやった1時間
あっという間に片付いて
二人の思い出消えていく

「先に帰るねありがとう
 鍵はあとからもう少し
 いろんなことを確かめて
 それから返すねいいかしら」

君の車の座席には
紙の袋と段ボール
必死で片付け入れたもの
昨日の二人が嘘みたい

君がトボトボ歩いてた
荷物を抱えて歩いてた
君はどうすることだろう
荷物も自分も思い出も

家に帰って時計見て
今日の予定をたどったら
たぶん今頃食事中
映画の話に盛り上がる

何かが一つ変わったら
歯車一つ狂ったら
ささいな出来事それだけで
大きく変わるそんなもの

何かが肩を押したのか
それとも自分の失敗か
今はシナリオ最悪で
歩き始めた別れ道



今日の出来事を思い出し、思い出しては書いている
時系列に書く以外できなかった

それよりも君の表情が思い出せない
どうしても思い出せない
当然だ
僕はあの瞬間から君の表情を見ていないから
Uターンして君を車から降ろすとき
君がぎこちなく懸命に笑顔を作ってくれたのを憶えている
一生懸命につくってくれた悲しい笑顔だった
アパートで鉢合わせた
それからお互いに無言で自分の荷物を片付けた
君の表情は見ていない
いつもはなまけものの君が
ずいぶん手際よく片付けていたのが意外だった
二年間ですいぶんモノがたまったものだと
妙なことに感心した
片付ける間、お互いに核心に触れる会話を避けていた
これからどうするとか
チケットを買ってしまった再来週の旅行はどうするだとか

僕たちはこの二年間であちこちに出かけた
行きつけのレストランも何軒かできた
もう二度と行けないね
きっと聞かれるよ
今日はお一人ですか?って
僕たちが別れるってそういうことだろう
ねえ君



君はこの事実をどう受け止めたのだろうか








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